誰かに聞きたかった。けれど、誰を頼ればいいのだろう。フェルゼンに?それとも私の唯一の侍女をしているニーナに?
 誰にも聞けない。異世界は力があるのだと思われているらしいここでは。



「うわっ」



 翔の声で我に返る。翔は丁度剣を弾かれ、美桜の矢が刺さった魔物は咆哮。その声はあたりに轟いた。

 その魔物は大きい。

 馬、牛、くらいの大きさだろうか。だが馬や牛なんかとは全然違う。ライオンみたいな顔に、角。牙。何の動物かなんてわからない。
 魔物には種類があるのは知っているが、今まで美桜や翔が倒していた魔物とは違った。いかにも狂暴そうだ。



「え、うそ…」



 倒せると思っていた美桜が弓を持ったまま固まる。それをルドルフが「ミオ!」と我に返させた。美桜は慌てて魔物を見据えるものの、戸惑いが滲んでいる。


 なんだが可笑しい。


 さっきまでばたばた倒していたのに、と思う私の前ではフェルゼンが剣を抜いて、「城に近いから出ないと思っていたのだが」と呟く。その目は厳しく見据えていた。だがむやみに前に出ようとしない。それは翔や美桜がいるからだろうと思う。

 彼らのほうが対魔物には強いはずだ。…私と違って。