最近、カオルは魔術師として努力したかいがあってか、まあまあ扱えるまでになっている。

 アッシュに触れるのはだいぶ慣れたようだが、まだ竜に乗ることは慣れないらしい。



 手合わせをして下さい!という声に、付き合ってやる。どこにも筋肉馬鹿らいるらしい。イーサンの顔がちらついたが、あれは一応魔術師である。たとえ魔物を殴り倒すとしても。
 


「閣下!お客様です!」



 雷が光る。
 それに負けないように大声を出したのはアレスだった。

 手合わせをしているのをやめ、見る。昼間だがこの天気である。薄暗く、雨の跳ね返りでぼんやりとしても見える奥にいた姿に「……なぜ」ともれた。


 建物から外に出る間には、屋根がある。よって外にはいるが、雨には当たらないで訓練場を見ることが出来る。そこにいたのは執事服を着たシエスと、なにやら荷物を持った女。
 アレスが「閣下!」とさらに呼ぶ。聞こえている!と怒鳴りたくなる。あまり大声を出すな、とも言いたくなった。
 団員が気づくではないか。


 フェルゼンは一体、と混乱しながらアレスのもとへと向かう。もちろん酷く濡れた姿で。



「どうした。何かあったのか?」

「あの、シエスさんが着替えを持っていくっていうので、つれてきてもらったんです」

「着、替え…?」



 なにかあったわけではないのか。それならよかったが…。
 一体どういう経緯でカオルがここにくることになったのだろう。




「それと社会化見学というか、勉強してきなさいって言われて…」

「誰に―――」

「トロスウェル卿ですよ」

「あの脳筋め」



 社会化見学などといいおって。