▼17 とある雷の鳴る日






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 ゼレンダール赤竜騎士団は首都にある騎士団の中でも大きいものの一つである。よって当てられた敷地とかなりの広さを誇る。竜にも大きさがあり、またそれぞれ変わってくるのだが…アッシュはその竜のなかでも大型である。

 一部は外に出ているし、または街中に出ている。それらの状況把握に、報告を聞く。会議に出る。鍛練に付き合う。だいたいの一日がそんな予定であるが、暇ではない。キリアールにいた間を埋めるように仕事を処理していく。人に会う。


 雨が降っていた。
 窓に叩きつけるような雨と、雷。停電にならないだろうかなどと思いつつ、横で「すごい雨だ」というアレスの呟きを聞いた。



「訓練はどうなっている」

「やらせていますよ。ただこの雨ですからねぇ。怨嗟でも聞こえてきそうで」



 どんな気候でも慣れておいた方がいい。よって雨だろうが雪だろうが訓練はある。魔物も人間もいつどうなるかなんてわからないからだ。

 となると体調を崩す者も出るのだが、体調管理もまた必要なことである。それをわかっているものの、かわいそうにと呟いている。

 そもそもお前が命じているのだろうが、とフェルゼンは口を閉じる。


 訓練場では今ごろ、雨に打たれながら必死に打ち合いをしているだろう。見に行くといって離れる。
 アレスはただ「ええ、いってらっしゃいませ」とだけ。フェルゼンが姿を見せるとさらにまたきつい訓練が、などと思われることをわかっているような顔だった。つまり、愉快そうな顔である。