シャエルサーン家、別邸であるこの邸には現在、フェルゼンが住んでいる。そして本邸からやってきた使用人らもまた生活している。

 ウジェニーはフェルゼンに「スカート!パンツ見える!」などと言っているカオルに笑みが溢れた。女性がパンツなどと一瞬思ったのだが、フェルゼンもフェルゼンで「見るやつはいない」などと返すのも問題がある。


 キリアールに行ってから、ああようやく坊っちゃんが帰ってくると邸のもの達は出迎えの準備をした。が、二人の女性の姿に驚いたのはいうまでもない。

 ニーナはキリアールの元貴族であり、現在は侍女。カオルは異世界人であるという話は聞いた。フェルゼンの世話を頼むといわれてからというものの、とウジェニーは振り返る。


 前はフェルゼンがしばらく邸を開けることは少なくなかった。寝泊まりは騎士団の元で出来るのであるため、仕事が多いと街にいたほうが楽なのである。だが、ここ最近はどうだ。

 帰ってきてすぐ、カオルのことを聞いてどこにいったか心配する。帰ってくること自体が増えているのだ。


 異世界人は少ないが、いないわけではない。彼らはここで生きている。それぞれの人生を。


 ウジェニーはこれからどうなるのだろうかと思うが、今はただ、この時間をと願った。