▼15 慣れるにも時間は必要
「髪の毛、伸びましたね」
ニーナが櫛をいれてくれながらそういう。
確かに伸びたな、と思った。前はぎりぎり結べるかくらいだったのが、今はばっちり結べるまでになっている。
この国では女性は髪が長くては駄目だとか、そういうのは無いので切ろうかなとも思った。私は髪の毛の質が良い方ではないし、くせ毛でもあるから。
が、それを「手入れ次第で綺麗になりますよ」とウジェニーが一言。じゃあもうちょっとこのままにしておこうとなった。
髪の毛の手入れはあまりちゃんとしてなかったし、化粧なんかも自己流だったし―――スフォルにきてからちょっと女子力が上がっているような気がするからおかしい。
ニーナやウジェニーが編み込みをしてくれたり、飾りをつけてくれたりすることも増えた。
髪飾りは様々な種類がある。ヘッドドレスというののだろうか?かなり大きめなものもある。頭が重いとぼやくほど。
因みにこの髪飾りなんかはカシェルからだったり、フェルゼンからだったりしている。たまにウジェニーらが買ってきてくれることもあるのだ。よって、ケースにはものが増えつつある。
いや、アクセサリーだけじゃない。洋服もだ。
「ニーナは、慣れた?」
「はい。ここの方々は優しいです」
「そうだね…本当に」
キリアールでは離宮の中が世界だった。書物だけが私の世界。勉強ばかりではつまらないから、物語も読んで夢を見た。美桜や翔を羨んだりもした。
何故私には力がないと。誰を信じればいいのかと。
思えば、フェルゼンはずっと優しかったのだ。キリアールでは、最初の頃あまり話さなかったけれど。
美桜と翔が中心で、私はそのオマケであると理解していた。諦めていた。けれど。
「カオル様も、明るくなられて良かったです」
「そうかな…。ようやく安心出来る場所にいるからかな」