翔は欠伸をして「邪魔にならなきゃいいけどな」と笑う。 美桜もまた「またそんなことを」と怒る。
 いつものことだ。気にかけているふりも大変だな、とぼんやりと見ていた。

 
 その二人の側には最近美男美女ばかりがいるのは知っていた。ハーレムか、とひきつりたくなる。
 本当にこの世界はライトノベルとかのようなことになっているのかと思うと、あながち私は悪役とかモブキャラとかだろう。



 魔物を倒す戦士。

 一人で普通の兵士の何人分なのか知らないが、魔物を倒せない私からすると超人である。憂鬱だった。

 行くだけならとはいったが、私は完全な素人である。何をどうしたらいいのかなんてさっぱりだし、戦えないのが一番大きい。よって私の護衛であるフェルゼンに言われるがままだった。

 動きやすい格好。服装は私の唯一といっていい侍女ニーナが着せてくれた。


 美桜と翔の護衛をしているルドルフという男が「戦えないのですから、後ろにいたほうがいいかと」と尤もらしいことを言う。そんなことわかっている。私だって死にたくない。
 魔物という化物とやりあうのは、超人だけで十分だ。

 美桜や翔は毎日出掛けて、魔物を倒す訓練をし、いずれあちこち行くことになるのだという。
 力の無い私は行けないらしいので、話だけの情報だった。それでも知らないよりはいい。


 私の腰には短剣が下がっている。普通の剣を持ったとして扱えないというフェルゼンの判断だった。その判断は正しい。剣は重い。ただでさえ体力や筋力がない私には体を痛めることはあっても、いいことはない。

 無力だ。本当に。

 さらに「お前もとんだ災難だな。まあ、お似合いか」ともう一人、ザウツとかいう美桜と翔の護衛に言われ、どうしてここにいるのかわからなくなった。
 
 私はどうしてここにいるのだろう。何をしているのだろう。