そしてゲームを始める。

最初に赤松千尋が私の手持ちのカードから1枚引き抜く。

そして揃ったカードを抜き捨てる。

それを見た後、私は彼の手持ちカードから1枚引き抜いた後、同じ行動をする。

地味なのは分かっている。

勝負は最後の2枚になった時。


あの日、クラスの子達とトランプをした日。

雨弥や奏羅以外と仲良く出来たのが凄く嬉しかった。

でも彼女達が私の事をよく思ってないのは薄々分かっていた。

それでも自分が顔に出やすいのを分かりながらも彼女達の提案したババ抜きに参加した。

まぁ人数も多かったし絶対に負けるって決まったわけじゃないし、と思ってたのは嘘ではない。

けど案の定負けて、面白がって出された罰ゲーム。

別にそんなの聞き流せばいい、やらなくてもいい話だと思った。

でも何か馬鹿にされているのが悔しくて、あの子達にひと泡吹かせたくて怖かったけど罰ゲームを実行した。

そんな動機は不純だったけど、今ではあのババ抜きをやって、罰ゲームを実行して良かったと思ってる。

須藤君と関われて、怖いと思ってた彼の事を知って、好きになった。

全ての始まりのゲーム。








「ほら、どっちかがジョーカーだ。」








カードを1枚抜いては捨てる、といった地味な行動を何回か繰り返し、とうとう最終局面。

私の手元はカードが1枚になり、赤松千尋の手には2枚のカード。

1枚は私が持っているカードと同じ数字、そしてもう1枚はジョーカー。

ここが勝負。この1発で決める。

私は意気込んで赤松千尋が持っている1枚のカードに手を付ける。