「え、でも顔が奏羅ちゃ」
「雨弥だから!」
「…ふーん、ま、いいや。」
あたしの必死な姿に納得したようだが、絶対あたしだとバレている。
てか何、顔って!あたしと雨弥の事顔で判別してるの⁉︎
ありえないだけど、怖っ、てかキモっ。
ガリ勉のくせに女の顔ジロジロ見てんじゃねーよ。
「それで、雨弥ちゃんは此処で何してるの?」
「…休憩です。」
「こんな所で?」
グイグイとあたしに質問してくる一条。
鬱陶しい…早くどっか行けよ!
てか、雨弥の事をちゃん付けで呼んでんじゃねーよ!
「ちょっと人酔いして…」
「あ、そうなんだ。保健室行く?」
「いや大丈夫だから…。一条君急いでるでしょ?早く行かないと…」
「え?あぁ、大丈夫だよ。これ千尋に届けるだけだから。」
そう言ってビニール袋に詰められているベビーカステラをあたしに見せる。
千尋って…あの暴力男だよな…。
あいつそんな可愛いもん食べんのかよ。
「僕のクラス、夏祭りがテーマで色々やってるからさ。」
「ふーん…」
「お客さんに売れない失敗したやつを千尋に処理してもらってるんだ。」
そう言えば一条は夏祭りで着るような青い法被を着ている。
まぁ似合ってないけど。
てか、ベビーカステラ美味しそう…
そんな事を思っているとあたしのお腹が大きな音を立てる。
その音は勿論、一条にまで届いていて…
「お腹、空いてるの?これ食べる?」
「い、いや…いい。」
あたしは恥ずかしさのあまり顔を背けながらまた廊下の隅に座り込む。
その後一条はあたしの隣に来て、一緒に座り込む。
「ちょ、ちょっと…!」
「雨弥ちゃんは、男嫌いじゃないから隣大丈夫だよね?」
そう言いながら意地悪く笑う一条。
こ、こいつ…!
