大好きな声が、耳に届く。 低く甘くて、愛しい人の声。 空を切り裂いて、風をまとって、まっすぐに私のもとへと届く。 優しくて、暖かい朔の声。 「…ばかぁ」 どうして、朔にはわかるんだろう。 どうしようもなく、やるせなくなったとき。 寂しくて、切ないとき。 辛いとき。苦しいとき。 朔の心が遠くに行ってしまう気がして、不安になったとき。 いつも冷たくて、クールでそれから口の悪い彼は。 猫のような気まぐれで、私の手を力強く引いてくれる。