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…死んでんのか?
まさかな。
地学の教科書を抱きかかえて、何故?瞳を閉じている女。
疑問点だらけの、生きてきて初めて出会った謎の光景に、静かに戸惑いながらも本鈴がもうすぐであることは、教えてあげようと近づいていく。
…目の前に立ってみたけど。
全く、起きない…?!
これ、もはや昼寝のノリじゃねぇだろ。
桜色の小さな唇がわずかに開いてて。
ごくり、と喉を鳴らした自分自身に、いちばん驚いて首を勢いよく振る。
「…お、おい…」
しゃがみこんで、とりあえず揺り起こすべく、腕を伸ばせば。
「…ん、むぅ」
小さく眉をひそめる彼女。
軽く身じろいだその拍子に、教科書によって、隠されていた胸元が視界に入る。
赤色のリボン、同級生か。
昼下がりの陽光に、白く反射する左胸のプレートを見やり、はじめましての名前を小さく口で反復する。
「…折野、花…」
すぅと、息を吸って心を落ち着ける。
「な、なぁ」
本鈴…そう続けようとした俺の言葉は、消えていく。
「…え?」
大きく見開かれた焦げ茶色の瞳と、目が、合ったから。


