薔薇でも百合でも、スミレでもなくて、私が初めて出会った花は、金木犀だった。 理由は単純明快で、これまた植物好きの父方の祖父母が、秋に生まれた私の誕生祝いにと、庭へと金木犀を植えたから。 私が成長する倍の速度で、ぐんぐんと空高く大きくなっていく木。 私にも読めるようにと、平仮名でお父さんが札を立ててくれた。 『金木犀』 私が生まれた季節に、花を咲かせ、香りを風へと乗せる。 …ふたりを引き合わせたのは、風に乗った金木犀の香り。