「ほら、行ってきな」
いつの間に、隣に立ってたんだろう。
岬が、いつものように小さく笑って、私の背中をそっと押す。
瞬間、駆け出して。
鳴り響くホイッスルも、ストップウォッチのうるさい音も。
私の大嫌いな女の子たちが、割れんばかりの悲鳴を上げて。
全部、全部に無視を決めこむ。
向かう場所は、たったひとつ。
咲かせる笑顔も。
紡ぐ言葉も。
二重の瞳に映すのも。
みんなみんな、私だけにしてほしい。
触れる女の子も、キスを贈る女の子も。
全部、ぜーんぶ。
私だけが、いい。
…なんて、そんなこと言ったら嫌われちゃうのかな。


