翔太と一緒にいると、楽しいのはもちろん、すごく心が安らいだ。
昔からの仲で気心が知れてることもあるし、それ以外にも、きっと色んな理由がある。翔太にしかない雰囲気とか、落ち着いた口調とか。
私の友達はこんなに素敵な人なんだよって、世界中に叫びたいくらい。
「ねえ翔太、写真撮ろう!」
「絶対やだ。めんどくさい」
「えーなんで!一枚だけでいいから!」
「つーかなんで今更写真?」
本当に今更だ。
出会ってから今まで、中学と高校の卒業式ぐらいでしか、一緒に写真なんて撮ったことがない。
これは今日から始める新しいこと。
一緒にでかけるだけでも充分思い出になるけど、形として残したら、もっといいんじゃないかっていう安易な考え。
「お願い!ね、一回だけ!」
「……ったく、しょうがねーなあ」
そう言って翔太は、私の手からカメラを奪い取った。
大きな水槽をバックにして、腕をのばしてレンズを自分達のほうに向ける。その隣に並んで、嬉しくて嬉しくて、思いっきりの笑顔でカメラを見た。
「いくぞ」
「はい!」
カシャ、っとシャッター音が聞こえた。
その瞬間、翔太は予想外の行動に出た。
なんと、自然な距離で隣に並んでいた私の肩を引き寄せて、私の頭の上に自分の頭を乗せてきたのだ。
まるで抱き抱えられているようなポーズが、このカメラの中に収まってしまった。
「え、あの…、カメラ目線じゃなくなっちゃったんだけど」
「うるせえな、一回だけの約束だっただろ」
行くぞ、とそっぽを向いてしまった翔太は、なんだかとても可愛らしく思えて。
その背中を見ながら、バレないように少しだけ笑った。

