さいごの夢まで、よろこんで。


カキーン。

「やったあああ!」

見事命中した球は高く上がった。
どうだ、と後ろを振り返ると、翔太は首を振って不敵に笑った。

「上がりすぎだな。あれじゃ内野フライだ」
「……まだ、あと19球あるし」

気をとりなおして、再び前を向く。
さっきのは上がりすぎた。もっと上から叩くようにすればきっと。

キン!

「おおおお!」
「いや、ファーストゴロだなー。打球が弱いぞー」

……観客、うるさい。
後ろから難癖つけられながらも、次々投げられるボールを打ち続けること20球。
全部命中、とまではいかないけど、素人女子のわりにはなかなかの出来栄えだったと思う。

「はい翔太、交代」
「よし、沙耶には負けねー」

翔太と場所を入れ替わり、わくわくしながら眺める。
翔太が野球してるところって見たことないけど、どうなんだろう。そもそもスポーツをしてるところって、ほとんど知らないことに今気付いた。

じっと集中して前を見てる翔太。
その視線の先からボールが放たれて、思いっきりスイング。

……渾身の空振り。

「やったあ!いいぞ!」
「うるせえ、喜ぶな!」

その後も翔太のバットは火を吹かず、ついには。

「えええ、今の当たりもピッチャーゴロだよ、絶対」
「くっそ、なんで飛ばねーんだ?……おい沙耶、気が散るから静かにしてろって」
「あ、ほらほら早く前みないと次の球くるよ……って」

よそ見しすぎた翔太の足に、飛んできたボールが見事にヒット。

「痛!!」