私は自転車をとった。
押し歩こうと、歩を進めると、突然手首をつかまれた。
……もう、何よ。
うんざりしながら、男性の方をふりかえると、私をつかんでない方の手でヘルメットを差し出してた。
「ほら、被れよ。こんな時間に小学生を一人で放置させるほど、俺は常識ないわけじゃねぇ」
真剣な表情をしてたから、余計困った。
善意だからこそ、断るに断れない。
私は小さくため息をついて、心のなかで決意した。
「私、家出してたの。だから……その、放っておいて」
男性の顔は見れなかった。
見知らぬ人だから、怒られることはないけれど、やっぱり良くないことをしている罪悪感を後ろめたかった。


