俺は携帯を見た。
ディスプレイには、【母さん】そう出ていた。



どうしたんだ?
一旦出てみた。



「もしもし?母さん?」
「蒼、今日ね、帰れなくなりそうなの」
「は?なんで?」



「ちょっと渋滞に巻き込まれて、すぐには帰れそうにないの。だから、夕飯は、愛菜ちゃんにお願いしてくれる?」



「うん。わかった」
「それじゃあ」



電話に切ってリビングに行こうと思って振り返ったら、愛菜が真後ろにいた。



「…蒼くん」
「な、なんだ」
「おばさんなんだって言ってました?」



愛菜は笑いながら聞いてきた。
あっこれは怒ってるな。
さっきの聞いてたことばれたし



「じゃ、渋滞に巻き込まれて、帰れそうにないって」
「そうですか。それより、さっきの私が言ってたこと聞いてましたよね?」



「な、なんのことでしょう」
「…嘘つく人には、夕飯は作りません」
「……はぁ!」



俺料理できないんだけど?
やばい。
愛菜を怒らせるとこうなるんだった。



「自分で作ってくださいね?」
「……聞いてましたごめんなさい」
「最初からそう言えばいいんですよ?」



謝ったらすぐに許してくれるからいいんだよ。
ちょろい



「蒼くん今ちょろいって思いました?許しませんよ?」



なんで心読まれてんの?
や、やばい。



「ちょろいなんて思ってねぇよ。」