…また、私の知らない私が現れる。

 いや、本当は知ってる。だけど、まだ自信がない。

 慣れてないだけ。こんなにすぐ近くに、男の子が居たことなかったから。

 胸の鼓動を押さえつけて、風に揺れるクワガタの髪を見つめる。

「あ、虹!?虹だぞ、ヒヨコ!」

 水溜まりに反射する光りと、空に淡く架かる虹。

 子供みたくはしゃぐあいつの横顔。

 雨上がりの帰り道は、私の前に広がる景色をカラフルに彩る。