恋することを知った恋


あたしもあんな風に呼べたらいいけど。

黒瀬先輩はあたしの名前も知らないし、勝手に黒瀬先輩と呼ばれていることも、ましてや自分の名字を知られていることすらも知らない。

あたしは何故か小さく頷いた。

「おーっ、麻奈美」

麻奈美…って、そう呼ばれてるんだ。

湧太先輩は麻奈美に気がついて、軽く手を挙げた。

「湧太の友達?」

声。

その言葉は黒瀬先輩の言葉で、あたしの耳にはあの時のあの声が再び戻ってきた。