恋することを知った恋


――でも、あたしがボーッとしていた本当の理由はそれじゃなくて。

麻奈美はもう話が終わったと思い込んでいる。

今これで終わりにすれば、この感情をなかったことにできるかもしれない。

ストローの中を上っていく紅茶。

いつものようにかきあげられた、麻奈美の前髪。

でもやっぱりそこに流れるのはこの感情と、あの声。


「ちょっとかっこいいなって思って」