恋することを知った恋


柔らかいのに重みのある声。

敬語じゃなくていいと言ったのに敬語のままの言葉。

何度か見た、軽く頭を下げる姿。

ふわりと揺れた黒髪。

また向き直って、教室の中に消えていった。

「杏里っ!連絡先聞けちゃったよっ!」

麻奈美の声は遠くで聞こえた気がした。

でも気づけば麻奈美は目の前にいて、あたしは一瞬、夢から覚めたような錯覚に陥った。