画面にはそこまでしか表示されていなくて、あたしはすぐにアプリを開きたくなる衝動を抑えた。 すぐに“既読”をつけたら、何かに気づかれそうで。 駆け引きってわけじゃないけど、あたしはそれをためらった。 「…黒瀬先輩」 麻奈美に小さな声で、そう呟いた。 麻奈美は自分が操作していたスマートフォンを床に落としてしまって、電源をつけっぱなしだったマイクがドン、という音を拾った。 笑顔と明るい声が響いていた部屋に、張り詰めた空気が漂う。