恋することを知った恋


軽く噛んだ唇が、少し、震えてしまったかもしれない。

気がつかれたら、ダメ。

この震えた唇も、その意味も。

あたしは少し慌てたようにうつむく。

何秒経ったか分からない。

うつむいたあたしの視線に、黒瀬先輩の足が現れた。

そのまま、黒瀬先輩のその足が一歩近づいて。

あたしは思わず顔を上げる。



「桐原、――」