恋することを知った恋


黙り込んだあたしを、不審に思うかもしれない。

でも、あたしは何も言うことができなくて。

ただ自分の想いと、こみ上げてくる何かを抑えるのに必死で。

「桐原?」

黒瀬先輩の優しい声が、しっとりと降ってくる。

あたしは顔を上げて、黒瀬先輩を見つめた。

無条件に配られる、黒瀬先輩の優しさ。

あたしが隣にいることなんかできなくて、近づけば近づくほどに苦しくなる。



こんなにも近いのに、届かない。