黒瀬先輩があたしを見て、軽く首をかしげる。 何秒間も、ずっと目が合う。 今なら言えそうな気がする。 でも――言ってはいけない。 「…なんでもないです」 あたしは発しかけた言葉を、喉の奥に返した。 黒瀬先輩は不思議そうに、あたしを見ている。 どうしよう、絶対変だと思われた。