遠くに見えた黒瀬先輩の姿は、吹奏楽部の楽器の音と反比例して大きくなっていく。 「黒瀬先輩、」 あたしは走った。 黒瀬先輩の元へと、走り出した。 廊下の窓から入る風と、サッカーボールを蹴る音。 加速するあたしの足と、鼓動。 目の前で待っているのは、 “手には入らない”、大好きな彼。