夏の足音がはっきりと聞こえた。

少し手を伸ばせばラムネの瓶越しに覗いたような真っ青な空に手を浸せそうな日だった。

今日の空はよりいっそう近く感じて、私の心の中にある何かを呼び覚した。

それは静かに、ゆっくりと湧き上がって、行所の無いもどかしさと焦燥感を生んだ。

風が季節の変わり目を運ぶ度、私がそれを感じる度、何だか昔に戻りたくなる。

何も知らずにアゲハ蝶を追いかけた昼下がりに。

また明日と、友に手を振った夕暮れに。

だが、それは二度と戻らない。

夢から覚めてしまえば、二度と同じ夢を見ることは無いのだ。

嗚呼、初夏の雨上がり。

入道雲が鮮やかに染めた昼下がり。