ヨ「おじさんが…殺された?」


「あぁ。いつもここにいた、ヨートムだろ?」


ヨートム。

それがあの優しかったおじさんの名前らしい。


「あいつは貴族だったんだ。身分を隠して、商人やってたんだよ。…金目当てのやつらの犯行だと。」


おじさんは、殺された。


…もう、あの人には会えないのか。


お父さん、お母さんにももう、会えない。




お父さんとお母さんは、今流行っていた流行り病によって死んでしまった。


なぜ、親が感染してぼくは感染しなかったのか。

 、、、、、、、
『神に選ばれた子』


みんなからそう言われていた。

神に選ばれたから、お前だけ感染しなかったと。

神に選ばれたから、生きていると。


こんな辛い人生なんて、もうさんざんだ。


もう、こんな人生……




ぼくはふと思った。


最後に、美味しかった香辛料が食べたい。


でも、お金がない。



麻痺した思考が作り出したその答えは――



――窃盗。


盗めば、簡単に手に入る。


バレなきゃ、大丈夫。


ぼくは目の前にあった香辛料をむしり取り、全速力で走った。



「おいガキ!!!金払え!おい!」


後ろから足音がする。


追っ手か、と思い、速度を上げる。


「…ガキが、調子に乗るな」


ヨ「あ…」


商人が持っていたナイフが、ぼくの右肩に刺さっていた。


目の前が真っ暗になった。