翌日。


ブ「あー…頭痛ぇ…」


ブラッドがだるそうに唸る。


ヨ「二日酔いだよ、だらしないなぁ」


ヨシュアは呆れたように言う。


テ「ヨシュア、ちょっといいか?」


ヨ「あぁティナ。別にいいけど、どうしたの?」


テ「ノア知らないか?」


ヨ「知らないなぁ…ミラと買い物にでも出掛けたんじゃない?」


テ「…分かった、時間とらせて悪かったな」


ヨ「今日はやけに素直だなぁ」ニコニコ


あれ、ヨシュアはいつから地獄に来たんだろうか…

ふと、そんな疑問が浮かぶ。


僕の抑えきれない好奇心は、自然と口を動かしていた。


くぅ「ヨシュアって、いつから地獄に来たんスか?それもどうして?」


まずった!そう思ったが、予想外なことにヨシュアは笑顔で言った。


ヨ「ぼくが地獄に来た理由?盗みかなー。随分昔の事だからあまり覚えてないけど」


ブ「おー…ヨシュアの過去話か…俺も聞きたい…」


ブラッドは力のない声でそう言い、ゆっくりとベッドから起き上がった。


ヨ「そんな期待しない方がいいよ、あんま記憶にないし…ティナの方が詳しいんじゃないかってくらい」


くぅ「ティナとヨシュアって、どういう関係なんスか?」


ヨ「ティナはね、班で初めて出来た後輩なんだ。」


ヨ「昔は朴(パク)先輩が班長で、朴班で生活してて…300年間、朴班の中でぼくが一番年下で…」


ブ「え、300年間年下だったって…そうとう悪いことばっかしてたのか?」


酔いが覚めたかのように興味津々でヨシュアに寄るブラッド。

…好奇心って、すごい。

ブラッドを見て、僕はそう思った。


ヨ「ブラッド、近い」


ブ「あっ、すまん」


ヨ「朴先輩がかなり問題児でさ。班長が生まれ変わらないと新しい子は入って来ないって決まりがあるからね。」


あれ?


ならミラはどうしてこの班に入れたんだろうか。


くぅ「なんで入れたんスか?」


ヨシュアにはこれだけで伝わるはずだ。


そう思って、言いたいことをかなり省略。


ヨ「ミラのこと?6人までなら班に入れるからだよ。阿修羅はぼくらの寮で暮らしてるけど、班に入ってる訳じゃないし…ぼくらの監視役ポジションだよ。」


ヨ「もし阿修羅も同じ班だったらぼくより更に生きてる阿修羅がリーダーで、『阿修羅班』になってるはずだしね」


テ「ヨシュア、そこから先は言うなよ」ヒョコ


くぅ「うわっ!?どこにいたんスか!」


テ「ずーっと俺ここにいたけど?気配消してただけだよ。ヨシュアは気付いてたんだろ?」


ヨ「もちろんだよ」


ヨ「でね、話戻すけど。ティナはぼくにとって初めて出来た後輩で、仲間になった時、嬉しかったんだ。ぼくが先輩なんだ、ってね」


テ「おい」


ティナの「言うなよ」を無視して、ヨシュアは話続ける。

聞いたのは僕だが、ヨシュアは自ら話したがっているようだ。


ヨ「あまりにも嬉しくてさ、ティナだけに教えてあげたんだよ、ぼくの過去。ティナ、覚えてる?」


テ「…何百年前だと思ってんだ、覚えてねぇよ」


ブ「ティナ、嘘はいいから。嘘ついたって俺には分かるぜ?」


変な能力があるから。

僕は心のなかで言葉を付け加えた。


テ「…10マザくれたら話してやらないこともない。」


ブ「う''…10マザ…でかいな…」


ブラッドは頭を抱えた。だが、僕にはさっぱり分からない。何に悩んでいるのかと、マザと言う単語が。

それを見抜いたかのように、ヨシュアは僕に話しかけてくれた。


ヨ「マザって言うのは、地獄のお金だよ。物を買うときに必要なんだ。くぅは多分日本人だろうから…1マザで20円、ってところかな」


くぅ「20円ってことは…10マザで200円って事ッスよね?そこまで高額じゃ…」


ヨ「ブラッドはギャンブルに全部貢いでるから。ダメ人間だよ全く…」


ヨシュアは、はぁ、と大きなため息をついた。


ヨ「分かった分かった、10マザはぼくが出すから…話してあげてよ、みんなに。」


テ「なんで自分で話さないんだよ」


ヨ「忘れたからに決まってるでしょ」フフッ


テ「…しゃあねぇなぁ…」


テ「じゃ、俺の知ってること全部話すぞ。」