私が待ち合わせ場所に立っていると、目の前に現れた車。

窓が開いて 律さんが顔を覗かせる。

「乗って。」

私は助手席に座り、シートベルトを締めた。

「今日も仕事 お疲れ様。」

ニコリ、と微笑む律さん。
その笑顔だけで 1日の疲れなんて 簡単に吹き飛んでいっちゃう。

「ありがとうございます。」

私はこの空間が大好きだ。

隣には律さんが居る。

私の好きな音楽をかけてくれている。

仄かな律さんのお気に入りの煙草の匂い。

手を伸ばせば律さんに触れられる。

ここで話すのは 寝たら忘れちゃいそうなくらいに 他愛ないこと。

それでも、話し相手が律さんだからこそ 話せているだけで幸せで。

私は単純だから、そこに律さんが居てくれたなら それだけで幸せ。

この時間は私が唯一 現実から目を背けられるような、そんな時間。