ある日の話。
俺は弟のシルファノとともに夕日を見ていた。
突然だ
「兄ちゃんは俺の神様だよ。」
シルファノはそういった。その顔は逆光でわからなかったが、悲しげな笑顔だった。
俺は神と呼ばれるのが、嫌いだ。
なぜかというのは単純明快で俺が国の人から神だと、神の子だと崇められているからだ。生まれながらの神童でなにもせずとも国民が着いてくる。
逆に双子の弟のシルファノは何故か産まれた頃から十字の傷があった。
俺の住む国じゃ十字の傷は悪魔の印と言われていて、しかもそれが不自然に産まれてからあったのだから、人はシルファノを悪魔の子だと忌み嫌った。
俺達は大臣の子どもだったから、世間様に知られている。
それゆえに広まるのは早かったのだ。

シルファノは人をむやみやたらに信じなくなった。けど俺だけにはよくなついた。
なにをしても一緒で、ただそれが逆に格差を生んだ。
「あーまたあいつ、シャルケ様の隣にいる」
「シャルケ様が穢れる。」
「気味が悪い」
そんな悪口さえ耳に自然と入ってきた。けど、シルファノは笑顔だった。

あいつは影で努力していた。勉強とか剣術とか、魔法とか。でも評価はされなかった。
俺はおかしいと訴えた。ただ、傷があるだけであいつはなにも変わらない。ただ、ひとりだけの弟なんだと。
その頃は城に住んでいたから、その言葉は届く事は無かった。

「兄ちゃん、俺のためにありがとう。でもいいんだよ。兄ちゃんがさけずまれるのは嫌だ
………兄ちゃんは俺の神様だよ」

そして冒頭に戻る。
「俺を神だと崇めるな。人間として、まずおかしいだろ?こんな、お前、頑張ってるのに」
俺は神様じゃない。そうこいつに何回でも言ったが、あいつは神様だからとその概念を最後まで捨てなかった。
「うん。でもいいんだよ。俺は兄ちゃんがいるだけで、生きる意味があるから」
…こうしたのはきっと俺だ。
あいつには俺という神様しか映っていないから。俺はあいつに神は他にいくらでもいると言った。言ったのだがやはり同じ回答しか来なかったのだ。俺は諦めた。

だが、ここで俺は諦めたことを後悔した。

「はぁ、はぁ…」
数日たったある日。俺は1面が熱い赤で囲まれた城を走っていた。
火事が、起こった。
政府に刃向かうレジスタンスが炎火魔法を一斉に放ったらしい。
俺はいつも鍵がかかっている弟の部屋へと向かった。
弟は城の中でも嫌われていたから、外側からしか開けられないようになっている。
中には窓もないし弟には、逃げ場がないのだ。
俺は鍵を持って一目散に走った。
水をと嘆く人
焼死体
城はぐちゃぐちゃだった。
けど、俺は。シルファノを助けることしか頭になかった。

結果的にいうと
弟は…死んだ。
…部屋に居なかったのだ。
助かった保証はないだろう。
「あ、あああああ
ああああああああああ!!!!!!!!!」
こんなに叫んだ日は無かった。
なんで!なんでなんでなんで!!!!!!
俺も弟がいることが存在意義なんだと初めて知った。知ってしまった。
だから、だから

「神様なんて信じない。一生信じるものか」
数年後俺は神父になった。
おかしいだろ?神様なんていないと思ってんのに。
簡単だ、あの後俺は城の唯一の生存者として教会に引き取られた。以上。
そのまま神父にランクアップ。ただそれだけの話だ。
ただ、一つだけの贖罪。俺は、それだけに懺悔をするだけ。
こんなひねくれてしまった俺は悪魔を密かに拷問をする奴になった。
あはは、神の子は、本当に神ではないのさ。悪魔以上に気味の悪い存在に変わった。
でも、もう迷わない。償いを、償いを、自分に。
俺は静かに目を開き正座をする信徒…家畜どもを見ながらいう。
「さぁ!!!懺悔しろ家畜ども!!!!!!」
神様じゃないんだよ。なぁ、天国で見てくれよ。シルファノ。お前が神様なんだよ。
俺のたった1人の神様なんだよ。