「兄貴もそろそろ歳だろ?恋人くらい作れよ」
オレは兄貴にそういった。寒い冬の日だった。大寒波が日本列島に来たらしく久々の雪が窓越しに見えた。
「あーそうだな…うーん…」
兄貴は顎をさすり首をかしげた。
オレと兄貴には8の差がある。兄貴はもうじき20代後半を迎えるのだ。母たちもその問題には頭を抱えているらしく近所に住むオレが時々訪問してはこう聞いているのだ。
しかし兄貴凄い唸っている。それにブツブツと独り言を呟いている。おかしい。
「おい兄貴どうしたんだよ」
「あー…んん…お前に言っていいかわからなくてだな…」
「なんだよ焦らすなよ。遠慮なくどーぞ。…あ、まさか恋人ができたのか!?それはそれでめでたいじゃないか!!!」
「ま、まぁそんな感じなんだが…ほんとに言うぞ後悔すんなよ…」
「おう。はやく…「彼女はな黒亜なんだ…」……は?」
黒亜…御崎黒亜というオレと仲がいい同級生の女の子だ。オレは密かに彼女に恋をしていた。
そんな…兄貴に取られるだなんて….
オレは兄貴の部屋を変な空気のままに出ていってしまった。
もともとはオレがあんなことを言ったから、こうなってしまっている。
黒亜は綺麗だ。どこにいくんだと思っていたが彼女の依り代は近くにあった。オレの兄貴という依り代が。
今まで積み上げてきた感情や何もかもが全部がぱらぱらとあるいは一気にガラガラと崩れていった気がした。
募った想いを伝えることが出来なかった自分と、今の今まで黙っていた兄貴が嫌いになった。
兄貴に嫉妬した。兄貴が悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い。全部兄貴のせいだ。
…感情は恐くはないが怖くなっていく気がした。
オレは生きる意味をこの時初めて知った。だから、だからだから

復讐してやる。もしあの2人に子どもが産まれたならその時は……。