ハジマリマス


――――ばかばかしい…


友達だと、今度こそほんとの親友だと思っていた自分がばかだった。


「お主と一緒にいて、本当に紗季が虐められていないとでも思っておったのか?
 すべてわしが根回しをしておったのだよ。
 紗季が虐められないように。紗季はわしの大事な妹だからのぉ~」


よしよしと紗季の頭を愛おしそうになでながら海羽が言った。


たしかに。そこはおかしいと思っていたけれど。

紗季が虐められないのは紗季の天性の性格だと思っていた。


その愛されるが故の性格だと思っていた。


「なぁ~んだ。結局、私の独りよがりか~」


私にはそうやって強がるほかに自分を守るすべを知らなかった。


もう、すべてがどうでもよかった。


今日はきっと厄日だ。

早く家に帰ってお風呂に入って寝てしまわなければ。


早くすべて忘れてしまわなければ……


心が壊れてしまいそうだった。


危うい淵に立って自分が何をしでかすか分からなかった。


「帰るのか?」


海羽の声が遠くで聞こえた気がした。


最後に聞いたのは紗季の


「早く、百々瀬さんに1位譲ってくれないかなぁ?」


って声で……。


本当に紗季は私を裏切っていたんだと分かって、笑えた。


そこから私はどうやって帰ったのかわからない。


目の前には執事の籠烏(こう)がいて……


籠烏の顔を見たら笑顔が出てきて……


気が付いたら家にいた。