ハジマリマス


「調子乗ってんじゃねーぞ!この地味子が!!!」

「…す、すみません…」


蚊の鳴くような小さい声で答えるのは、私。斎藤朱里(さいとうあかり)。


「地味子のくせにいい加減、一位の座譲れや!!」


この声の主はクラスで目立つグループに属す女の子Aさん。いわゆるギャル。(名前は覚えていない)


「百々瀬さんが困ってんだよねぇ~?」


この子は同じく、Bさん。(Aさん同様名前は覚えていない)


「…でも、…」

「でも?なんだよ?お前いい怪訝にしないとそろそろやばいことになってくるぞ?」


そういって私を突き飛ばしたAさんはそのまま私のおなかに一発、蹴りを入れた。

先生にはわからないように、というのだからそういう方面では頭がいい。


「あら。みなさん?何をしていらっしゃるの?」


笑いを含んだ声でひときわ目立った子が近づいてきた。
この子がAさんとBさんの言った百々瀬亜耶香(ももせあやか。ここでは百々瀬という。)


「百々瀬さん。いや、ちょっとこの地味子を調教してただけですよ」

「ふーん…。調教、ねぇ~」


見下した目に嫌悪を覚える。


「じゃあ、私もひとつ」


ニコッときれいに笑った百々瀬はほかの子から受け取ったバケツを持って…


――――――ザバァンッッ!!!!


私に水をかけた。


「汚いわねぇ~。さっさと1位譲れば楽になるのに」


下を向いたままの私に百々瀬はバケツを投げつけて言った。


「百々瀬さん。行きましょう。…汚いのがうつる」


私は細菌か何かか…

こうやって世の中のいじめられっ子は生きる気力を無くしていくのだと分かった。


「じゃーね、濡れ子さん」


そう言って去っていく三人の後ろ姿をにらみながら強く握った手にひらが血で薄く染まった。