「へい、おまちど」
一通り手伝いをすませてから、冷蔵庫に入っていたオレンジジュースを手渡した。
嬉しそうに「ありがとっ」と言っている姿を見ると嬉しくなる。
とりあえずおれも向かいのイスに座る。
「あのね、わたしの名前ね、はるねっていうの!
おにいちゃん、お名前なんてゆーの?」
「おれか? おれは圭介。……はるねちゃんっていうのか?」
「そうだよっ。
ねえねえ! けいすけにいちゃんはさ、美容師さんなんだよねっ??」
急に〝けいすけにいちゃん〟なんて呼ばれたもんで恥ずかしくもどかしくて顔が熱くなる。
あれ、おれさっき美容師じゃないって……
「あ」
「そうなんだよね!?」
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『おにいちゃんもびようしさん?』
『んー、兄ちゃんは……』
『こら圭介!! 早くカラー持ってきて!』
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「いや、兄ちゃんは……」
「はるねね、かみのけながいでしょ? だからみんなに〝おばけみたい〟って言われるの」
言いかけて口を閉じる。
たしかにはるねちゃんは髪の毛がお腹くらいまで伸びていて、毛先も揃っていない。
「けいすけにいちゃんびようしさんだからかみのけ切ってくれる??」
「え……まあ……その」
さて、どうしたもんだか。
