「仕事の鬼なんて、言われていた時代もあったんだ」



仕事の…鬼?
いやいや、全くそんな風には見えない
驚きすぎて、口を開けたまま
蔵田課長の顔をガッツリ見てしまった


「仕事に夢中になりすぎてね、妻の変化に気がつかなかったんだ」


その話は私なんかが聞いても良いのだろうかと不安になる
けど蔵田課長は話をやめようとはしない


「妻とは社内恋愛だったんだ、妻は人付き合いがあまり得意じゃなくてね…いつも下を向いて仕事をしていたよ。なんとなく、気になったんだ…この人はどんな風に笑うんだろうって…」

「それから結構経ってからだったけど、偶然にも妻の笑顔が見れたんだ。その瞬間、身体に電気が走ったんだ」


ははは、と笑いながら
一目惚れってやつだ、と
照れくさそうにしている