母は何度も私の前に現れた
だが、私にはどうすることもできない

私の手元には一切ない
残りの学費も弁護士さんの方で
父の遺産から払われていたから


あまりにもしつこい母の事を
弁護士さんに相談した途端
パッタリ母は私の前に現れなくなった


それからどうしたか、なんて知らない
母は…私のことを金ヅルにしか見ていないのはわかっていたから


父は誰にも看取られず
ベットの中で冷たくなっていたという
私に会いに来て、手続きをし
安心したのか…


孤独死…という括りとは
違うのかもしれないが
世間的には、そう呼ばれた


だから、陽子が何気なく言った言葉が
引っかかってしまった



「女なんだから、一生に一度くらい結婚して子供を産みたい!」



陽子は勢いあまり
言い切った後、グラスにのこるビールを
ぐびぐびと飲み干した