「何もない。何もなかった」


そう言って私の肩を抱き
ゆっくり寝かせてくれた



「おやすみ」


そう言った小山課長は
私の頭を一触りして
寝室から出て行った



何もない、
何もなかった…、か


忘れろという意味なんだろうか
それは無理な話だ

あんな目にあって
未遂とはいえ
あんな所を見られたんだ


怖い、そう思ったら
身体が震えている

自分の腕で自分の身体を抱きしめる
ふわり、と鼻に香る匂い


いい香り、
柔軟剤なんだろうか…
ふわふわの布団

もしかして、これって
小山課長のベット?


って、ことは
小山課長の匂いなんだろうか…



あ、あ、や、やだっ
余計な事を考えたせいで
身体が熱くなる

さっきの震えが嘘のように治り
バクバクと音を立てる心臓が煩い