そんな手を振り払うなんて出来ないし
したくない
幼い日の思い出
母がまだ優しかった頃の…
母の手を握り
母も握り返してくれた思い出
「小夜ちゃん?」
小山課長のお母さんの言葉にハッとする
『ご、ごめんなさい』
思わず、自分の顔を隠すように
手で頬に触れた
『やだ、なんでもないです』
トイレにでも逃げ込もうと
立ち上がろうとしたが
その前に私の視界は暗くなる
「大丈夫よ、今日から私があなたのお母さんだから。お母さんの前では強がらなくていいのよ、ね、」
小山課長のお母さんは私を抱きしめてくれている
もしかしたら、私の両親の話を知っているのかもしれない
きっとそうだ
だって、聞かれなかったから…
温かい
お母さん、って
こんなにも温かかったんだ
そう思ったら余計涙が出た

