それから式はどうする、とか
籍はいつ入れるのとか
話は勧められた
「俺は別に焦っていない。籍を入れてから考えるつもりだ」
私も小山課長と同じ意見だ
ただでさえ忙しい人だから
別に結婚式なんてしなくてもいい
「何を言っているの?結婚式は一生に一度!しかも花嫁のものなのよっ!男がきめることじゃないの。一生に一度、一番綺麗になる日なの」
小山課長のお母さんの言葉で
忘れていた記憶を思い出した
『小山課長、結婚式挙げたいです』
ほらね、とお母さんは嬉しそうに
身を乗り出してきた
男は邪魔よ、と私の手を引き
リビングの隣の部屋へ向かった
障子の引戸を開放すれば
リビングと繋がる和室
小さな木の机の上には
部屋にふさわしくないパソコン
どうやら
パソコンで結婚式場やドレスを
調べてみるらしい
いつもの私なら、断っていたかもしれない
けど繋がれた手は
小山課長と同様、温かい

