『…すみません、要領…悪くて』


馬鹿にされた…
たったこれだけで
私を否定した…この人


『…失礼、します』


ファイルも渡した、
後は何もない
早く帰ろう

私…この人、苦手



何も知らないくせに、
馬鹿にされた気分だ

別に知ってほしいわけじゃない
できることなら、構って欲しくない
課長の頼みだからと言って
引き受けた私が悪いけど
もう引き受けない


そう思い、急いで会議室を出ようと
ドアノブに手をかけたが
私の手の上に覆いかぶさる大きな手に
驚いてしまった


何?
そしてもう片方の手が
ドアを開けないようにと伸びていた



「逃げるな」



その声が耳元で聞こえる
何が起きているのか…わからない
けど、どうやら私に
逃げ場はないのだけはわかった