若さに欠けてるなんて思っておりませんのよ?
わたくしが言いたいのは、冷静沈着でいらっしゃるとか泰然としていらっしゃるとか…

とかとか、なんとかカントカ。

身振りを交えて必死に訴える紫信の頭を、要の大きな手が撫でる。


「気にしなくてイイから。
実際、同期のヤツらより年上だし」


「あら、そうなンですの?」


「僕は帰国子女でね。
話すのはともかく日本語の読み書きが不安だったから、入学を一年遅らせたンだ。
だから19才の高校三年生ってワケ」


あー…

そうなの。
それでも、一才しか違わないの。

やっぱちょっと老成してンね、要サン。

でも、それじゃ…


「高校生で一人暮らしだなんて…
要だけが日本に帰っていらしたの?
ご両親はまだ海外に?」


洗剤を濯いだ皿を要に手渡しながら、紫信は眉尻を下げて訊ねた。

ソレを受け取って、白い布巾で拭って…


「んー… まぁ、そう。
僕一人で帰国したンだ」


答えた要は、なんだか歯切れが悪い。

と言うより、なんだか嫌そう。


「その辺りの事情は、すぐにわかってもらえると思う。
一部非常───に気が重いケド、君には家族を紹介するから」


うん、なんだかスっゲェ嫌そう…