「そんなに慌てて窓を閉めて…
ナニかありましたの?」
「いや、ナニも。
だがこの窓は、もう開けてはいけないよ」
「そうなンですの?
わかりましたわ」
「どの窓も、もう開けてはいけない。
窓に近寄ってもいけない。
君はもう、外を見てはいけないよ」
「まぁ…
やっぱりナニかありましたの?」
「…いや、ナニも。
でも、いけないよ」
「だけど… だけど… わたくしは…」
「もう、二度と、いけないよ。
わかったね?」
「…わかりましたわ」
「そんなコトより、話がある。
この家を引き払おうと思うのだが」
「またお引っ越しですの?
少し前に、越してきたばかりですのに」
「あぁ。
キャンピングカーでも買って、しばらく旅をしながら暮らしてみないか?」
「まぁ!
車の中で生活するンですの?
アチコチ回りながら?
なんて楽しそう!」
「君が喜んでくれて、私も嬉しいよ。
そうそう、ただいま、紫乃(シノ)」
「ふふ。
お帰りなさい、信太郎(シンタロウ)さん」



