花京院家の愛玩人形


「なんですって?」


「あー… えー…
いや、君は騙されてない。
呪いの鼻三角は実在するよ」


「あら…では…」


「でも、彼女はもう人形じゃないンだ。
可哀想に、妙なモノに憑かれてしまってね。
人形は本来、人に愛でられるためだけに存在しているンだよ。
だから人を傷つけたり恨んだりはしない。
ナニがあっても、絶対に」


「それは…
魂を宿したお人形でも?」


「そうだね」


「それは…
人に愛してもらえなかったとしても?」


「そうだね」


「…
どうしてしまったのでしょう、わたくし…
なんだかとても…
胸が苦しい…」


「よし、話を変えよう。
ところで最近、いつも窓の鍵が開いてるね」


「…ふふ。
花京院様が梯子から落ちてしまわれては、大変ですもの」


「僕がこの部屋を訪ねるようになって、もう半月くらいカナ?
ずいぶん歓迎してくれるようになったね」


「あら。
わたくし、最初から歓迎してましてよ?」


「いやいや。
最初は絶対、変なヤツだと思ってた。
違う?」