花京院家の愛玩人形


「…
まじで?
じゃあ…見間違いカナ?」


「いったい何をご覧になられましたの?」


「いや…
ココに登ってくる前にね?
いつもは閉じている一階のカーテンが今日は薄く開いていて、偶然、中が見えたンだ。
その時、僕に背を向けて座っていたビスクドールがフっと消えたような気がしたンだケド…
きっとシェードランプかナニカを、ドレスと見間違えたンだろうね」


「…
花京院様…
それはもしかして、我が家に迷い込んでしまった動くお人形では…」


「あらら。
この前のお伽話がまだ、夢見るお姫様の頭から離れないみたいだね。
人形は動かないって言ったでショ?」


「でも… 捨てられたお人形が、律儀に現在地を電話で報告しながら家に帰ってきたりもするのだと、テレビで拝見しましたわ」


「…どんな番組観てンの。
その話は、人形を粗末に扱ったという罪悪感から生まれた都市伝説だ。
人形は動かない。
まして、リカちゃんはビスクドールじゃない」


「あら…そうなンですの?
実際に動いたとか人を傷つけたとかいう鼻三角のお人形が、ウ○ーレン夫妻の博物館に飾られていると聞いたのですけれど…」


「…どんな番組観てンの、まじで。
怖くなかった?」


「そりゃあもう、恐ろしかったですわ!
でも、花京院様に教えて差し上げようと思って頑張りましたの。
なのに…わたくし、騙されましたのね…」


「…
くそかわ…」