視線は上げられない。
この目に彼女を映す資格などないのだから。
「言い訳はしません…いや、できません…
俺はもう二度と、あなたの前には現れませんから…最後に一つ、願いを聞いてもらえませんか…?」
「まぁ、なんでしょう?」
「逃げてください」
「逃げる?わたくしが?」
「そうです。
そして、ドコかに身を隠してください。
あなたは狙われています」
「両目のないビスクドールに、でしょうか?」
「…
…
…
は?」
おーっと。
初志貫徹ならず。
紫信の衝撃発言に、アッサリ視線を上げちゃいましたYO!
ナニ?
知り合いなの?
あのオッソロシー人形と知り合いなの?
メガネまでズレちゃって、まるでマンガのような間抜け面を晒したコーヅキが見た紫信は、彼が思った通り微笑んでいた。
その声と同様、穏やかに、柔らかく。
あぁ…
やっぱり彼女は美しい…
「コーヅキ先生…と仰るのでしたわね。
わたくしは紫信と申します」
美しい唇が、美しいメロディーを奏でる。



