ボソボソなのにグイグイくる要。
オロオロと困惑する紫乃。
「暇つぶしくらいにはなるでショ?
迷惑?」
「いいえ、迷惑だなんて。
でも… 何もお返しできない身でありながら、花京院様のご好意に胡座をかいているようで…」
「別に、君にはナニも求めてないから。
本当は、君が望むままに僕が君を愛でたい。
君の願いは全部僕が叶えたい。
でも、無理。
君は僕のモノじゃないから。
だから僕は、今僕が出来る限りのコトをする。
要するにコレは、僕の自己満足だから。
じゃ、また明日」
「えぇっ!?
お待ちください、花京院様!?」
言いたいコトを言うだけ言って椅子から立ち上がった要に、紫乃は手を伸ばした。
が、届かない。
紫乃のぎこちない動きでは、入ってきた窓に大股でスタスタと向かう要の背中に追いつくことはできない。
グイグイってか…
コイツ、強引すぎねェか?
長い足で窓枠を跨ぎ、振り返った要が言う。
「ココ、ノックしたらすぐに開けてね。
落ちたら僕、死ぬかも」
だーからぁ…
その高さじゃ、落ちても死なねェってば。
やっぱり言いたいコトを言うだけ言って、要は去っていった。
「本当に…
なんておかしな方でしょう」
一人部屋に残された紫乃は、茫然と、だがどこか楽しそうに呟いた。



