だから今日も…


「紫信姐サ」


「やめて」


「サーセンっ、師匠!
紫信サン、遅ェっスねェ…」


図書館で紫信を待つ要の隣には、退屈そうに上半身を机の上に投げ出すコージがいる。



本を読め。

もちろんユイも一緒だが、化粧室に入ったまま出てこないトコロを見ると、メイク直しの真っ最中なのだろう。



なぁ、本を読めって。

いつもとは逆なのね。

要が、紫信を、待ってンのね。

おそらく今年最後の台風がきて、昼過ぎに臨時下校になったからね。

慌てて連絡したのだが、もう紫信は家を出た後だったというワケ。

メールよりも手紙が似合う、黒電話よりもさらに遡ってデルビル電話器が似合ってしまう紫信だから、道端でスマホを弄る姿なんて見たくもないし、想像もつかないと思っていたのだが…


「ナイわー。
今時ケータイ不所持とか、まじナイわー」


というユイの言葉に、今回ばかりは要も頷いた。

風が唸り、大粒の雨が消火時の放水にも似た勢いで斜めに降りつける。

こんな嵐の中。
連絡手段もなく。

一人で外にいるなんて…