今度は、紫信が目を丸くする番だ。


「メイド…ですって?」


「そうだ!
『あきば』の『めいどかふぇ』にいっぱいいるンだろ?
兄ちゃんが言ってた!
行ってみたい、って!」


ハイ、誤解は加速中デス。

そして兄よ。
まだ幼い弟に、萌えの世界を教えンな。


「そっか!『めいど』か!
アレはカレシじゃないのか!
よかった、よかった!」


またも元気よく叫んで、ピョコンと椅子から飛び降りる少年。


「あ…あの…お待ちになって?
わたくしはメイドでは」


「オレ、もう帰る!
遅くなると、母ちゃんに叱られっから!
じゃあな!
し…//しししし紫信///!!」


勢いよくランドセルを背負い、言い逃げの様相で駆け出す少年。

いや、ほんっと可愛いケドも。

図書館では走るな&叫ぶな。


「少々誤解が…
お待ちください、タケル様…」


紫信は慌てて立ち上がり、この場でのギリギリセーフラインの声で呼び止めようとしたが…

まだ開ききっていない自動ドアから走り去る、タケルの耳には入らない。

けれど。

タケルと入れ違いに図書館へやって来た男には聞こえたようだ。