花京院家の愛玩人形


あぁ…

あの目。

身震いするほど冷たく。
澱んだ闇を湛えた。

狭い隙間から垣間見えた、花京院 要の目。

その、唯一という称号を得た男の狂気を孕んだ眼差しが、本当は何一つ手にしてはいなかった空っぽの胸を…

胸を…


「師匠…
アンタこそ、真の愛の伝道師だ☆」


雨音の中。

床にへたり込んだコージは、ジンと熱くなる胸を両手で押さえ、要が消えた方向を食い入るように見つめて呟いた。

ハイ。
彼は人生の正規ルートから外れた模様デス☆

人生には、意外と落とし穴が多いもんなんデスネ。
思いの外たくさんの人が、簡単にコロンコロンと転げ落ちるもんなんデスネ。

コワイワー

そして、いたいけな少年にも道を踏み外させた要はというと…


「あー…
ドシャ降りだよね」


当たったらそこそこ痛そうな豪雨を降らせる暗い空を見上げ、頭を掻いてボソボソとボヤいていた。

ココはまだ、図書館のエントランスキャノピーの下。

愛しの紫信をあんまり濡らしたくないナ、なんてコトばっか考えているこの男の脳裏からは、気の毒なコージとユイのことなど、既にキレイサッパリ消滅しているのだろう。

てか、そもそも始めからインプットされていないのかも知れない。

ほんっとコイツ、コワイワー