花京院家の愛玩人形


もっと軽くてよくない?

てか、もっと軽いモンじゃない?
今時の恋愛なんてさ。

俺が摘んだ花だって、ちょいちょい花園から家出するし。
帰ってこないヤツだっているし。

いくらだって増えるから、それを気にしたコトもなかったケド…

どうして、彼女たちは去るのだろう?
どうして、このコは去らないのだろう?

ただひとつの場所にシッカリと根を張り、そこから引き離されるくらいならいっそ枯れてしまえと願う、この花は…

自分を仰ぐ貞淑で高潔な瞳が、今までの軽薄だった恋愛観を壊していく。

そう言えばこのコ、左右の瞳の色が微妙に違うンだな。

そんなコトにも気づかないほど、なーんも見てなかったンだな。

今まで手に入れた誰のことも、きっとちゃんと見えてなかったンだろうナー…

窓を叩く激しさを増した雨音を遠く聞きながら、自戒に思考を囚われて立ち尽くしていたコージを…


「なら僕は、君が舌を噛む前にこの男を絞め殺そう」


なんていうおっそろしい殺害予告と、突然本棚から飛び出してきた大きな手が襲った。

本棚を挟んで向こう側の通路に、誰かがいる。

まばらな本の隙間から長い腕を差し入れ、片手の指の力だけで喉を潰そうとしている。

光のない冷ややかな目が、まるで命なきモノを見るように自分を映している…

あ、コレ、俺死んだ。


「およしになって」


凶器となった骨ばった手に触れた細い指先が、諦めの境地で走馬灯を眺めるコージに助け舟を出した。